C/2006 T1 レビー彗星「発見」事情

2006年10月4日（水）

今朝、新彗星を発見！
しかし、私の発見の3時間43分前にIAUCが発行されていて、C/2006 T1 レビー彗星 となっていることが判明した。
何と厳しいことだろう！
 
昨日は22時前に床について、今朝は午前2時に起きた。20分運転してい つもの観測地へ行く。今日はしし座を捜天したい。理由のひとつは、この2週間で6回の捜天を行ったが、しし座は捜天していないこと。もうひとつは、10月のしし座にはたくさん彗星 が発見されている、と関勉氏の著作にあったことである。不運にも、低空20〜30°以下は霧がかかり気味であったが、午前3時にしし座から捜天を開始。10分後、東の空は霧が濃くな り、唯一晴れている南を捜天せざるを得なくなった。NGC2207（銀河）を捕らえる。3:40には全天が晴れ渡り、再びしし座に望遠鏡を向けた。

垂直捜索を行い、土星が2回視野を通過した後（視野は1/3重複させている）、明るい彗星状天体が視野の中央に入ってきた。NGC2903に違いないと思っ た。ナビゲーターの検索機能で探すと、NGC3020となったが、NGC3020は問題の彗星状天体から2°以上離れている。この瞬間、問題の天体は新彗星であると断定した。なぜなら、この辺り にNGC2903以外の明るい星雲はないことを知っているから！

ス ケッチ１　
45.7cm 68x
視野 1.3°

クリックで拡大

ス ケッチ１
45.7cm 68x
視野 1.3°

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位置をナビゲーターの表示とウラ ノメトリア2000を使って確認した。薄明前に日本の観測者がこの彗星を確認できると思って、4:14〜4:17に中野主一、門田健一、 中村彰正の各氏に電話した。中野さんは留守のようで伝言は残さなかったが、門田、中村の両氏は留守電に伝言を入れた。

再度、位置を確認して移動の確認、荒いスケッチ、光度と視直径の推定を行った。30分で東に約1’ほど動いているようだ。4:46に薄明の中に消えるまで 見えていた。4:53に国立天文台に電話して、留守電に伝言を残した。スタッフは9時には出勤して来て後で連絡を くれるだろ う。

望遠鏡を片付けて家に帰り、まず、この位置に既知の彗星がないことを確認した。次に メールを確認すると佐藤裕久氏がOAA-cometメーリングリ ストで、下記の天体がNEO CP に出ていると言っている。

 J01E42 [2006 Oct. 02.5 UT. R.A. = 09 41.4, Decl. = +15 19, V = 12.5] Added Oct. 2.83 UT [1 nighter] 

Observer Comments:
 Receipt time    COD INIT ONS Comment
 2006 10  3.1992 J95 PB   yes Found 3' W and 2' S of nominal

このウエブページのことはよく知 らないが、すでに公表されている。
何ということだ！

その後、6:49に吉本勝己氏がComet–obsメーリングリ ストで眼視観測を報告している。

C/2006 T1 (Levy)
IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG ICQ XX*OBSxx
   2006T1  2006 10 03.81 xM  9.8 TK 25.4L 4  46   3.4  3            ICQ XX YOS02

今回は公式発見とはならいが、 「発見」を中野主一氏、スミソニアン天文電報中央局、そして国立天文台に報告した。中野氏からは今日の夕方にメールをいただき、私から電話があったとき は、その彗星を観測していたとのことだった。

インターネットの時代になり、競 争はより厳しいものになっている。
それでもなお、今朝自分が経験したように彗星発見のチャンスはまだあるのだ！

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「発見」メモ

赤経　09h42m40s　
赤緯 +15°02’
2000年分点
9.5等，5’，DC 6, 30分で約1’？東へ移動
発見時刻　2006年10月3.79236日UT　(10月4日　4: 01JST)
45.7cm反射，68倍

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